「親知らず」は医学的に「智歯 (ちし)」と呼ばれ、一番前の歯から数えて8番目の歯です。
多くの智歯はまっすぐ生えてくるのは難しく、歯肉 (歯茎)に埋まったままであったり、出てきても横向きであったりして、汚れが溜まりやすく歯磨きがしにくいため、炎症(智歯周囲炎)による痛みが出たり、正常な歯を前に押し出し歯並びを悪くする原因になることがあります。さらに、智歯をそのままにしておくと、手前の歯がう蝕(むし歯)になってしまうことがあります。
必要のない智歯を残しておくことで様々なリスクが生じますので、そのような智歯がある場合は抜歯をすることをおすすめします。また、一度痛みが出た智歯は、疲労が蓄積したり、風邪を引いたりして、自己免疫力が低下した時に再度痛みが出ることがあります。そのようなケースもできるだけ早めに治療することをおすすめします。
などです。
上顎智歯は柔らかい骨に囲まれているために、完全に歯肉に埋まっている場合を除けば、比較的簡単に抜歯できます。局所麻酔の注射を行った後に、智歯を脱臼させて抜去します。抜歯後は止血するのを待って手術終了です。止血が困難な場合は縫合をすることがあります。状態によっては下顎智歯と同時に抜くことも可能です。
下顎智歯の抜歯は、真っ直ぐに生えていて簡単に抜歯できるものから、横向きになっていて (水平埋伏)、歯肉を切開して抜歯するものまで、抜歯の難易度や方法、リスクもさまざまです。当院では、基本的に歯科用CTを撮影して下顎の神経 (下歯槽神経)との距離を確認して、細心の注意を払って抜歯を行っています。 (当院には医科用CTと比較して被曝量が大幅に少ない、歯科用CTを完備していますので、院内での撮影が可能です)
下に一般的な横向きの下顎智歯抜歯(水平埋伏智歯抜歯)の例を示します。
智歯の位置や向きなど難易度や患者さんの状態によりますが、抜歯時間はおおむね60分程度です。
過去5年間における麻生歯科クリニックの智歯抜歯の手術件数は年間平均300例以上施行しており、神経麻痺などの重篤な合併症はありません。
また、麻生歯科クリニックでは、不安の強い患者様に対し静脈内鎮静法という麻酔法を用いて、ほとんど眠った状態で智歯抜歯を行うことが可能です。静脈内鎮静法はインプラント手術や胃カメラ検査などで用いられており、安全な方法です。自費治療になりますが、ご興味を持たれた患者さんはご相談ください。
麻生歯科クリニックでは、市立病院や大学病院での勤務経験が豊富な口腔外科医が智歯抜歯を行っております。
ほとんどの症例に対応可能ですが、全身麻酔下での治療が最適と判断した場合や、抜歯手術による神経麻痺のリスクが非常に高いと判断した場合は市中病院や大学病院などへ紹介することもあります。
自家歯牙移植は以前より行われていた安全な方法ですが、インプラント治療の進歩により徐々に行われなくなってきました。しかし、ここ数年、インプラント埋入後のケアを行わない歯科医院や、技術の未熟な歯科医がインプラント治療を行うなど、インプラントのトラブルがクローズアップされてきたことで、この自家歯牙移植が再度脚光を浴びるようになってきました。
自家歯牙移植の多くは不要な智歯 (親知らず)を抜去し、歯を失った部位に移植します。問題なく生着すれば、根管治療 (根の治療)と補綴 (かぶせ物)治療を行い、もとの歯があった状態とほとんど同じように噛むことが可能です。自家歯牙移植はインプラントのように人工物ではないため、生着すれば細菌感染などにも抵抗性があり、非常に良好な予後が期待できます。
第一大臼歯、第二大臼歯(奥歯:6番目、7番目)を抜歯されているか、もしくは抜歯になる予定で、かつ移植に適した智歯(親知らず)がある場合。
ただし、残念ながら自家歯牙移植はすべての患者さんに適応できるわけではありません。ご希望されてからCTなどのX線検査評価を行った後に、移植困難と判断されることもあります。また、一般的に自家歯牙移植は適応年齢があると考えられており、高齢者や骨粗鬆症、リウマチなどの患者様では治療成績が悪くなりますので自家歯牙移植をお断りする場合があります。
過去5年間における麻生歯科クリニックの自家歯牙移植の手術件数は年間平均15例以上行っており、経過は概ね良好ですが、必ずしも成功する治療ではないことはご了承ください。自家歯牙移植は保険適応ですので、ご興味のある患者様は一度ご相談ください。
外科専門医